手の平の中に、世界はあった。

ガラケーって言葉も無かった頃の携帯電話ゲームとか昔のゲームとか、他なんやかんやを書き残しておきたい、そんなブログです

「Project Winter」がVtuber界で流行った理由を考えてた

 今年に入ってからVtuber界をざっと浅く視界に入れるようになる中で、6月ごろから今夏にかけて、ひんぱんに目にする単語があった。『雪山人狼』、正式なゲーム名は今回記事タイトルにした『Project Winter』である。

自分はかつて何度か興った人狼ブームに飲み込まれ、人狼ゲームというものを少々齧った身であったので「雪山"人狼"」と称されたこのゲームに対していくらか興味が湧いていた。ので、いくつかのVtuberが配信していた実際のプレイ動画をアーカイブで追ってみたわけだが、視聴していくうちに「あぁなるほど、これはVtuberの間で流行るのもわかるな」だとか、「これ、従来の人狼というゲームが抱えている問題点が解決されてる良いゲームだな」などと色々考えが浮かんできた。

つまりは、「Project Winter」は良いゲームだなぁ、と語りたくなったわけである。

8月頭にはファミ通.Comで取り上げられる(https://www.famitsu.com/news/201908/12181368.html)などして本格的に人気に火がついたようである本作、何がどう良いのか自分なりに書き留めていこうと思う。

 

"人狼+サバイバル"なら初心者も楽しめる

  「皆でこの中に紛れた人狼を駆逐しよう!」と表の団結を謳い、そのために誰が人狼かを暴くべくディスカッションし、進展していく状況の中で人狼を当てる名探偵の栄誉と村の平和を求め、その裏で人狼は少数派の連帯感の中で村人たちを騙し、1人ずつ襲撃をかけて口封じし、破滅に向かわせる。

この推理と議論と疑心暗鬼の熱いぶつかり合いが人狼ゲームの醍醐味であるのだが、「面白そうだからやってみようかな?」という初心者を引き込みプレイ人口を増やすにあたって『人狼』というゲームにはひとつの大きな問題点があった。

右も左もわからない初心者ではこの面白さを享受する事は非常に難しい、という事だ。

何せ従来の人狼には「役職」というものが存在し、やれ占い師がどうの霊能がどうの進行がこうなら今日はこうしようだのと、円滑な議論のために抑えておきたいポイント、いわゆるセオリーというものが最初からいくつもあるわけだ。

とりわけネット上でプレイする人狼においては、"初心者歓迎"を掲げる場でも無い限りは初心者も慣れたプレイヤーも場の中では同列に扱われるのが風土である。これは「この人初心者っぽいから配慮しないとな」というメタ読みで甘く見てもらえる事を期待できない、という事だ。なのでネットでの人狼ゲームは基本「何したらいいかわかりません、どうしたらいいですか?」と訊ねる事さえも憚られる、厳しいゲームになってしまっている。

結果どうなるかというと、セオリーも何もわからないので状況に即してうまく喋るなどという事はできるわけもなく、1ターン(ゲーム内1日)ごとに行われる『全員投票による村人の処刑』において「この者は人狼を根絶するにあたって村に貢献する人物とは思いがたい」と見做され、いわゆる"寡黙吊り"として最初のターンでゲームから除かれがちになってしまうのだ。

これで脱落する初心者は珍しくなかった。処刑・襲撃により場から除外されたプレイヤー同士で観戦しながらおしゃべりはできるのでそこから先人にアドバイスを受け乗り越えるプレイヤーもそりゃ居はしたが、ひどいとその先人が初心者に心無い言葉を吐きかけて「こんなイヤな思いにさせられるんじゃ2度とやらんわ」と心を挫かせて追い出した事例なんかもある。プレイヤーとして実際に参加し見てきた身からすると、従来の人狼ゲームは楽しめるに至るまでに越える必要のあるハードルが高いなと感じていた。

 

 では「Project Winter」はどうか。本作はそもそも通称ジャンルが「人狼"サバイバル"ゲーム」である。純粋な議論→投票処刑→襲撃のサイクルで構成される人狼ゲームとは違う。

人狼ゲームで言うところの村人に位置するサバイバーの目的は人狼ポジションであるトレイターの根絶ではない。極寒の雪山を生き残り、救援を呼び脱出する事である。この大目標のためにプレイヤー達は寒さと空腹と野生動物に負けず立ち向かいながら資材を集め、脱出に必要なアイテムをクラフト、あるいは探索で発見・収集し、MAPを把握しながら修理や救援要請を行っていかなくてはならない。

このサバイバル要素によって、「ProjectWinter」は"何をしたら良いのかわからず動けない初心者"をほぼほぼ発生させない構造を実現させたのだ。

とりあえず誰かに付いて行きながらせっせとアイテムを集め、作っているだけで場に貢献できるのならば1戦やるだけでもそれなりに「きちんと遊んだ経験」を持ち帰れる。この点は人狼ゲームとしては非常にデカい。経験者側もゲーム中に表立ってしっかり流れをナビゲートできるので初心者ケアもやりやすい。

これにより経験者Vtuberが未経験者Vtuberを「やろうよ~」と引き込み、参加させたらゲーム内で「どうやるのー?」「これこれこうするんだよ」という暖かいコラボ交流のてぇてぇシーンが量産された。これだよ。こういう手ほどきてぇてぇを世のファンは求めてんだよ。

全員協力する必要のあるサバイバルというジャンルを混ぜ込んだことで、開始直後から経験者が初心者を一方的になぶる構図もまた簡単には生まれ得ず、ある程度は全員が手を取り合って1つのゲームをメイクしていく流れに必然的になる、というのは製作者の発想が素晴らしいと言わざるを得ない。

人狼は疑心暗鬼のゲームではあるが、「Project Winter」は本質的に優しいゲーム、優しくあろうと思えばあれるゲームであると言えるだろう。

対戦して勝ち負けがきちんと決まって欲しいけど優しく・楽しく他者と交流をしていきたくもある、そんなVtuberたちがこのゲームでワイワイ遊びたがるのも納得の作品なのである。実は。

 

 【最大8人】のハコはVtuber界隈なら丁度良い?

 従来の人狼ゲームを遊ぶとなると、8人という人数は正直に言おう。物足りなさが否めない。

何故なら"基本一通りの役職"というものが8人では揃わない編成パターンが主だからだ。具体的に言うと処刑した者が人狼か否かを判別する霊能者(霊媒師と呼ぶ所もある)が入らないパターンが多いし、村人でありながら人狼の味方をする裏切者(狂人と呼ぶ方が自分は時代的にしっくりくるのだが)も入ったり入らなかったりまちまちだ。この少人数編成をこよなく愛するプレイヤーも勿論居てそれは良い事なのだが、役職一通り入ったフルセット16人(第三勢力が欲しければ17人)が入口だった身としてはどうしても贅沢に慣れてしまって大味だなぁと感じてしまうのだ。

さりとてこのご時世に1ゲーム16人揃えるというのは簡単な話ではない。Vtuberであってもだ。『にじさんじ』レベルのでかいハコに所属しているならまだしも個人勢がこの規模の人狼をやりたいなどと思った日には難しいどころの騒ぎではないだろう。ていうか開始前の雑談やゲーム後の検討会が絶対わやくちゃになるし。

 

 この辺りの問題も「Project Winter」であれば考慮する必要が無い。アップデートでロール要素が盛り込まれるようにはなったが、基本的に「Project Winter」はサバイバーか、トレイターかの2陣営に分かれるしか無いのでシンプルで良い。殺るか殺られるかだ。面倒が無い。

「最大8人」という人数も、ただの一般ピープルのプレイヤーならソロなり誰かと連れ立って2、3人なりで適当な野良サーバーに入るかーといった具合だが、見ているとどうやらVtuberのいわゆるコラボ企画としてはほどほどに豪華な見栄えがして丁度良いサイズのようである、という印象を受けた。

それこそ本作の震源地は『にじさんじ』メンバーの配信であり、あそこの所属であれば8人を集めるのは比較的容易であるように見受けられる。というか他のゲームだとまぁ大体4人で1つの場・卓を囲んで遊ぶかなという感じだが「にじさんじ」だと4人じゃなんか微妙にメンツがあぶれるという事態にさえなる、そういうハコなんじゃないかと思うのだがどうだろう。「にじさんじ」に詳しい方その辺どうでしょう。

ともかくその4人の倍の人数というのは単純にボリューミーであるし遊んでいく中で流動的にコンビ・トリオできゃっきゃする一幕があちこちで見られる美味しさがある。

そして「Project Winter」はそのゲームの性質上、誰か1人が音頭を取って主催になって配信する形ではなく『○○視点』として各自配信して遊ぶ形式になっている。

この点も色々良い。まず8人という人数を主催としてまとめる、などと考えなくてよい。同列にプレイヤーとして遊び、気楽に声をかけて集められてかつ人数が多くて豪勢に見えるとなればこんなうまい話は無い。

見ているファン側からしてもこの配信形式ならば推してるVtuberの再生数・再生時間に直接寄与できるというのも嬉しい所だ。誰かの主催でお邪魔する形になるとどうしてもそこのところは主催した人の手柄になるしか無い点を歯がゆく思う部分があるファンも居るのではないだろうか。時間が開いてアーカイブで見返そうと思っても本人の動画一覧に無かったりして追う手間が発生するという地味なデメリットもあるし。

推してる○○が出るから見たけど殆ど出てないし喋って無かった…という事もこの形なら起こらず、推しが楽しく遊んでいる様子を集中して視聴できてありがたい。

 Vtuberもそのファンも誰も損をしないつくりというのもあってか、近頃は他の所属や個人勢のVtuberが「Project Winter」を遊ぶ配信を見かける機会も増えてきている。「どこもかしこもコレやってるなぁ」と見飽きてきたファンも居るかもしれないが、流行るのには流行るだけの理由があるということでできればご理解いただきたいものである。沢山の人とワイワイ遊べる楽しさにはやっぱり抗いがたいのだ。それはVtuberも同じであるだろう。

 

1ゲームの最長時間が決まっている=スケジュールのケツの見込みが立つのは強い

  この点、Vtuberなどの配信を行う者にとってかなり強い利点だと思っている。

「Project Winter」は1ゲーム"30分+α"というちゃんとした時間制限がある。30分経ったら凶悪なメガブリザードがゲームフィールドを包み、サバイバーをゆっくりと、しかし確実に死に追いやるのだ。コワイ!

従来の人狼ゲームだと8人であっても"開始前雑談~ゲーム本編~終了後感想戦"で1戦1時間は欲しいところだし、16人フルセットともなれば1ゲーム2時間、3時間はザラで持っていかれる。今の時代においてこの長さはもうそろそろそぐわない長さになってきているのだ。

時間制限の無いゲームだと『短いときは短いけど長い時は本当に長引く』という見込みの立たなさが時に問題になる。「ここで終わると配信としてはちょっと短いけどもう1ゲームやろう、のその1ゲームが長かったらと思うと困る」という悩ましい自体に陥らされたVtuberやファンの存在は想像に難くないだろう。

「Project Winter」なら、(1回の配信で2か3ゲームってところかな?それで大体1時間~1時間半の配信になるな)とざっくりかつきっぱりと区切れるのだ。特に1日2回行動などと言って配信頻度が高く後の予定を気に掛ける必要があるVtuberなどには助かる遊び心地なんだろうなあと推察している。

 

 また、人狼ゲームという面においても"30分経ったらサバイバーは基本、皆死ぬ"という設定は効果的な働きをもたらしているように見えた。

展開によっては「○○が怪しい」という争点ひとつでずっと場の生存者が堂々巡りで言い合いをし続け膠着状態に陥る、なんて事も有り得るのが人狼だ。状況を動かしたくとも動かせない、当事者も傍観者も脱落した観戦者も、ニコ生なんかの舞台によってはゲーム参加者たちを見守る視聴者までもがストレスが溜まっていく展開である。

「Project Winter」ではそんな膠着、固執をしていたらおおむね共倒れで死ぬんである。

30分という制限は実際にゲームを見ていると思っていたより短い。わき目もふらず広いMAPを駆けずり回り、テキパキ必要な物資を揃えていかないと救援までこぎつける事さえも難しくなる。初心者が多いとトレイターが何も手を下さずしてタイムアップを迎える展開さえありうる程だ。その状況でプレイヤーAとプレイヤーBが互いに怪しいと対立を持ちこんでもじっくり腰を据えて精査する暇はあんまり無いのだ。そのくらい絶妙に忙しない。

これにより従来の人狼ゲームでは場に公開された情報を精査しロジックを組み推理していた静的なゲームであったところを、疑念を抱きながらも生還のために手足を止めず走り続けるか、いっそ武器を持ち暴力でもってすっぱり疑念の元を絶つか、という動的なものへと変容させた。

本来の人狼ゲームがミステリーなら、「Project Winter」はサスペンスである。

約30分のサスペンスムービーが様々な展開・切り口でリアルタイムで作り上げられているようなものと解釈すれば、Vtuber達の「Project Winter」配信の面白さが少し理解しやすくなるのではないかと思う。言わばこれはエンタメストーリーを生むための舞台セットなのだ。

 

「Project Winter」ならば"善良な敵対者"としてイメージを保つことができる

 このゲーム、サバイバーとトレイターという2陣営に分かれてプレイヤーが戦うが、自然&野生動物という人の意志が介在しない第三勢力が存在する。

首尾よくトレイター2人を判明させて囲んで棒で叩き打ち勝ったとしても、キャンプファイアキットや食料といった命綱無くブリザードの中を彷徨うハメになって全滅する事態は有り得るし、上手く単独行動に持ちこんで暗躍しサバイバーを蹂躙するぞと意気込んだところで、狼に散々齧られて独り雪原に倒れ込む末路を歩むこともあるかもしれない。生きてる人間が一番怖い?このゲームではどこまでも平等で無慈悲な大自然の方がよっぽど怖かったりするのである。全員死亡で実質引き分け、という結果になる事もあるのはゲームとしても面白い。

加えて前述したようにゲームには30分の制限があり、足並み揃わずモタつけば間に合わない。

 

おわかりいただけるだろうか。このゲーム、トレイターになったからって直接手を下さなくてもサバイバーは全滅させられるのだ。

斧を振るったり銃を撃ったり、あるいはMAPに点在する貯蔵庫の解放を妨害するなどといった直接的な手段に出なくとも、脱出のためにまずは発電施設を修理する素材を集めよう!という段階でその素材を上手くちょろまかして抱えたり、木材をキャンプファイアキットに、燃料をスモークボムにクラフトするなどして修理に素材を回せなくすればそれだけで遅延行為になりわずかずつだがサバイバーの首は締まっていく。狼や熊を刺激して哀れにも襲われている風に装って他のサバイバーも巻き込んで痛み分けにし弱らせてやっていい。

 Vtuber達は今や種族も色々、立場も色々な存在であり「このVtuberはこういう子なんです」というイメージってものもある。善良だとか清楚だとかいう子が普通の人狼をやって皆を騙す、なんて事はできなかったりして手を出せない事もあるだろう。そんな子でも「Project Winter」なら安心して敵陣営で手を汚さず勝つ事ができるのだ。

……まぁ、それをやった結果「狡猾」「怖い」「エグい」とか言われる事もあるかもしれないが。逆に狡猾キャラ・知略キャラとして演出する立ち回りも可能という事で、ピュアからヨゴレまで幅広いロールプレイを許容できるゲーム性である、とも言えるだろう。何事も言い方ひとつだ。

 

何度目かの人狼ブームはまた来るのだろうか?

 とまあこのように、「Project Winter」とVtuberの親和性は高く、ゆえにVtuber界隈で流行りそのファンも購入して遊び……といった流れで知名度と人気が高まっているようである。ゲーム価格も約2000円と中々お手軽なのも他のVtuber・一般プレイヤーともに参入しやすい要因になっているだろう。

「従来の人狼ゲームは難しい……けど人狼っぽいものを遊びたい……」という需要にマッチした本作、今後の展開によってはあるいは「Dead by Daylight」のようなポジションに位置するゲームにもなり得るのかも……人狼ゲームを好む者としてちょっと期待したいところである。興味が湧いた人は購入してみてはいかがだろうか。

 

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 1つだけ残念なことがあるとすれば。私が最推しの全世界が推すべきVtuber懲役太郎がこのゲームをプレイすることは多分おそらくきっと無いだろうなあ、という点だろうか。

いやそういうパソコンゲーム弱いおじさんな所も好きだからね。いいんだよ。マイクラさえも知らない世間と知識が隔絶されてる所も魅力だからね。いいんだよ。

「Project Winter」に関係はありませんがVtuber・懲役太郎のチャンネル登録よろしくお願いします。推して。

 

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 あと過去に書いた記事もよろしくお願いします。全銀河生命体で懲役太郎を推してくれよな。

 

nagaharu-gamer.hatenablog.com

 

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