手の平の中に、世界はあった。

ガラケーって言葉も無かった頃の携帯電話ゲームとか昔のゲームとか、他なんやかんやを書き残しておきたい、そんなブログです

嗚呼、素晴らしき「あんたがた」 ~19匁勇者レポを添えて~

 

 今は昔。5ちゃんねるはかつて2ちゃんねると呼ばれており、数多のネット民があの膨大なインターネット掲示板サイトに絶えず集っていた。

とても古い話だ。(平沢進)

その2ちゃんねる掲示板、通称「板」の中でも極めて混沌の坩堝として蠢いていたのが「ニュース速報(VIP)」という板であった。VIPというのは痛烈な皮肉であり実際の位置づけとしては便所の落書きと揶揄された2ちゃんねるの中においても掃き溜め、ニュースなどという看板は名ばかりのなんでもありの無法地帯という扱いをされていた。

膨大かつ自由な情報のやり取りが流れゆく大河の中で、ほんの僅かうつくしいもの・面白いものの析出が起こることがあった。それらは例えば今日に至るまで便利に使われるネットスラングであるとか、キャラクターやゲームなどといったコンテンツの類の形を取ることもあった。

「あんたがた」もまたニュー速VIPにてぽんと放り込まれて板の住民どもたるVIPPERの手によって祭り上げられ出来上がった、ひとつの【面白い】の結晶なのである。

 数年前、何がきっかけかはもう忘れたがこの結晶の煌めきを見てしまい、どうしようもなく惹かれてしまって以来ひっそりと抱いていた夢があった。

 

いつか、『勇者』になりたい。

 

これは、夢を叶えたしがないいち勇者の記憶の書き留めであり、ついでだから「あんたがた」で記事書こう。そうしよう。と思い立った者の記録である。

 

インタラクティブなんちゅうもんは2005年にもう「あんたがた」が体現してたんですわ

 そもそも「あんたがた」とは何か?

ゲームマスター(GM)側が提示したリドルを名も無きネットユーザー達が挑み、解明する一種の謎解きイベント……というのが1個人の主観による解釈である。ガチ勢からは「謎解きではなく挑戦」「あんたがたはあんたがた」というワンランク上の解釈に至る者も居るが知らない方向けの説明としては「CLANNADは人生」めいた圧縮言語では難しくなってしまうので一旦謎解きという解りやすい説明でご勘弁願いたい。

具体的にどういうものか?というのは以下の、過去開催回の模様を記録したリンクを参照されたい。

 

5番煎じまとめサイトhttp://blog.livedoor.jp/a5support/

16番煎じ公式サイト:http://16ch.soudesune.net/

今年のゴールデンウィークに開催された平成令和煎 全ツイートまとめ:https://togetter.com/li/1344996

 

見るのも手間だから手短に説明して欲しい、いわゆる「今北産業」な人に向けてざっくり説明すると、

 

セブンイレブンネットプリントを活用して謎が記された問題用紙が公開されます

・謎を解くと何処かしらの【場所】が出てきます

・その場所に行くと合っていれば何かが書かれたガムテープを発見できます

 

というものだ。

 「あんたがた」の何が面白いかというと、問題用紙の周知や謎の答えが合っているかの確認は誰かが現実で行動しなければ取れない、という点にある。

誰かが何十円か払ってプリントした問題用紙をアップロードしてシェアするからネットの皆で知識を持ち寄って解読を試みることができる。この者を"セブン班"、転じて"せばん"と呼んだ。

誰かが弾き出された解答により出て来た地点へ向かうから次々に問題に挑み続けていられる。この者は"勇者"と呼ばれその労をねぎらわれ、讃えられた。

これは近頃注目されもてはやされている、インターネットとリアルの双方向性、インタラクティブの体現であるのだ。ネット側で組み上がった情報がリアルへ降り、リアルで取得した情報がネットへと上る。この情報のラリーによりイベントが成立し、誰かの何かに反応が起こる感触の気持ち良さは、実はVIPPRの"あんたがた"にとっては相当昔から既知のものである。

自分が壮大な祭りを動かす歯車のひとつになる―――これが、これこそが、『VIPクオリティ』。実働部隊を必要とするシステムにより謎解きができなくても何らかの形でこの「あんたがた」という祭りに参加することができるつくりになっているのだ。

 

『ちょっとだけど、この楽しい祭りの片棒を担いだんだぜ!』

 

そんな心の勲章を求めてVIPPER達は集い、大いに遊んでいた。バカ騒ぎを楽しむ者たちが記録されたまとめサイトや過去ログは、輝いて見えた。

今日の「あんたがた」を盛り上げているのはその輝きの中に居たものもいれば、輝きに魅せられて引き寄せられ、自分もいつかは…!という大志を抱いて参加する者もいた。

自分は後者だった。後者だったのだ。VIPで行われた第1回に遅れること数年の後に契機は忘れたが存在を知ってまとめを散々漁って憧れていたクチだった。

 

それがまさかあんなことになろうとは、『ツイッターのあんたがたに挑戦します2019』開催時の時点では夢にも思わなかったのである。

 

19匁勇者レポ……レポ?主に心境の記録ディレクターズカット版的な

 端的に言って、色々と巡り合わせが良かったのだ。

 

 

19匁から導き出される現地のアタリがついたのは朝の7時直前のことだった。「あんたがた」の朝は遅い。皆深夜まで謎に挑み論を交わしスプレッドシートでは戯れ合い、結果遅く寝るので起きるのも遅いからである。それでも早朝から取り組む健全な人も当然いるわけで、この19匁の解明の決め手となった朝勢の"甜菜"(天才のスラングである)の発言により上記ツイートのように位置が特定される。何時いかなる時に進展が起きるかわからないのが「あんたがた」である。

そしてこうなると後は現地に行ける"勇者"を待つばかりとなるのだが、先述したように「あんたがた」の朝は遅い。行けるけど今まだ寝てる、あるいは時間帯が時間帯なので朝の支度中でツイッターは見ていない、はたまたこの日は平日のクリスマスなので近いんだけど仕事が…!という立場の者もいた。

 

 

そんな所でのそのそと6時ごろから起床して諸所の雑事を済ませてゆるりと進捗を見に来たのがこれである。

勇者待ち。千葉県は四街道。千葉と聞いて反射的にソワソワした。千葉県は近い。行けなくはない気がした。……裏で路線検索をかける。

 

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方向音痴にとってこういうルート検索は生命線

 

検索結果から導き出された移動にかかる時間は約1時間。これを長いととるか短いととるかだが、結論として「行ける」「短い」と判断した。

理由はいくつかあった。まず時間帯。朝に出て昼に帰ってこられるので夜に出るよりは精神的ハードルが低い気がしたのだ。次に19匁に至るまでの現地の数々の中にもっと行くのが大変な場所があったのを見ていたので、相対的に楽に見えていたからだ。千葉はド平地なので山道を分け入るようなこともないし、北海道・発寒のように雪と戦う必要もなかったからだ。

そしてもうひとつ。何回目の開催かは思い出せないが、全てが終わった後にまとめを見て「当時参加していれば行けたのに」という現地があったのを覚えている。まさかのyahooジオシティーズがサービス終了したことにより追えなくなった回があるのでちょっと確認が取れなかったのだが、確か船橋競馬場が現地だった問題があったはずだ。

それが、「あんたがた」に焦がれた契機だった。あの時「いつか、手が届く距離が現地になった暁には、必ずや」という夢を抱いたから今年の「あんたがた」を追っていた。

今、手が届く距離に、あの"勇者"が手にすることができる【次のパスが書かれたガムテープ】があるかもしれなかった。

 

 

このツイートの「出よう。」はそんな経緯の果てに出た結論だった。行こうかな?ではない。行くのだ。かくしてこのツイートを打ってから急いで身支度を整えて着替えて旅立ったわけである。

 

 再度言うが、この日はクリスマスではあったものの平日だった。平日の8時台に最寄り駅の電車に乗ったわけだがこれがどういうことかと言うと、通勤ラッシュの只中である。いやあ電車の中がみっちりしていた。でも私が行くのは仕事ではない。勇者業で行くのだ。そんな心持ちで乗った満員電車はこれはこれでオツなものだったと言っておく。

 

 

津田沼から快速・成田空港行きへ乗り換えて四街道駅へ向かう道中の1枚。この日はキンキンに寒く、津田沼で乗り換え待ちで10分ほど駅構内で待たないといけないのが中々に辛かった。主な持ち物にスマホと財布と常用しているsuicaがあったので、この待ち時間中に財布を出してキオスクで暖かい飲み物を購入。

成田方面なんて普段用事が無いから来ないので車中、表には出さないものの非常にソワソワしていた。ソワソワすぎて「ここに乗ってる人らは色んな理由で成田方面に行くけどガムテープのために電車乗ってるのは私だけなんだろうな……フフフ……」などと謎の面白さを噛みしめる。情緒が不安定。

 

 

 そんなこんなで現地最寄り駅である、四街道駅に到着したのが9時をわずかに回った頃。スマホのカメラでこれを撮った後ざっと駅前を見渡す。マックがある時点で自宅最寄り駅より栄えてて便利だなと思いました。うちの最寄り駅、およそファストフードの類の店無いんですよねこのご時世に。どんだけぇー。

そこから移動中にアドバイスされた現地までのルート参考にしつつグーグルマップのナビアプリを使いながらてくてくと10分ほど徒歩。やがて信号を渡った向こう側にあるの明らかにそうだな、という大きな公園に到着。

 

 ところで。当方生来ポンコツである。方向音痴も相まって適当に何かをするとか急いで何かすると大体ポカミスをやらかす。それくらいのポンコツであるというのをまずここに明言しておく。

着いたので電話ボックスをカメラで撮ってアップするも後になってボックスに姿が映り込んでいるのがわかったのでそっと消去。もう今にして思えばこれは前フリのポンコツ

いよいよガムテープを探す。まず電話ボックスの外側をざっと見る。無い。

次にボックスの中に入って電話をじろじろ裏まで見る。無い。

じゃあ後はここだ、と電話を置いている台を下から覗き込むと……あった。

あったのだ。本当に8桁の数字が書かれたガムテープが。あったという事は、数時間前にどこかの誰かが突き止めた問題の答えは正解であると、今自分が1人で一番最初に証明した、という事だった。

この事実を観測した瞬間の感情といったらない。もう若くないし朝だし思いっきり外なので叫びはしなかったけど、お宝を見つけた冒険者の気分ってきっとこんな感じなんだろうな、とぶわっと嬉しさが胸の中に広がったあの感覚は、向こう数年は忘れることはないだろう。

 さて喜んでばかりもいられない。次はこれを撮影してネットプリントを待ち構えている"セブン班"に繋がらなければならない。いそいそとガムテープを一旦はがし、電話機に貼りつけ撮影。ツイッターを起動して……文章を入力して……

 

 

そして画像を添付し忘れて世間にポンコツぶりを晒した麦飯がこちらになります。

もうね。よっぽど消そうかと思いましたよこのツイート。お前はいつもそうだ。慎重に確認をせぇうつけ者が。

思いっきり恥をかいて消えたくなりそうになるも気を取り直して画像を添付。良い子の皆は先に画像を入れてからツイート内容を書こうね!!!!

 

 

これを以って"勇者"の仕事は完遂となる。後は次の問題が"セブン班"により通達され引き続き「あんたがた」は進行していく。この進行に手を貸せた、その満足感を抱き帰路についたのだった(実際はちょっと公園に留まってから帰った。鳩が砕けたドングリをつついていたのを眺めたりなどしていた)。

朝食も採らずに急いで出たので終わって四街道駅前に戻ってくるころにはお腹が空いていたのでせっかくのクリスマスだし鶏肉食べるかとマックでナゲット15ピース食べてました。限定のソース、オマールエビはチキンと相性良くなくてあんまり美味しくなかったです。チーズフォンデュはチーズっていうかマヨっぽかったけどマヨっぽかったがゆえにまあまあ良かったです。どうでもいい食レポ

 帰りに車両が4両という少なさでホーム待ちしていたら待ってる位置に車両が来なくてあらあらと余分にほんのり歩くという小さな面白ポイントが発生しつつもトラブルも無く無事帰宅。

 

 

推しを推さずには終われないファンの鑑。鑑?

ともあれちゃんと行ってちゃんと帰って来てこその"勇者"、帰宅報告を終えて以降は1参加者の立場へと戻ったのであった。

改めてスマホのデータを見返すとツイッターにあげた分以外の画像を撮影していなかったのである!状態でそんなんだからポンコツやらかすんだよなぁと失笑がこぼれた事をご報告しておきます。撮って上げる作業に慣れていない。

 

誰もが、誰かの、『VIP STAR』(過去の名曲)

 リアルタイム開催の中で実際に参加して、改めて「あんたがた」は、

『誰か』がヒーローになれる。

『誰も』がヒーローになれる。

そういう夢のある催しなんだなと再確認できた。出されるリドルも思いもよらない知識・経験が活きる問題が平気で飛び出てくるのが「あんたがた」の特徴だ。

今回の開催中において忘れられない"甜菜"のツイートがある。

 

 

ボーカロイドの曲のPVが問題に使われる。これほどの自由さ、何気なく楽しんでいる・楽しんでいたことが正解に至るカギになる気持ち良さもまた一般的な謎解きイベントでは得難い「あんたがた」の醍醐味である。今回はポケモンGOやマリオメーカーを駆使したものもあったし、いつぞやの開催ではとあるネトゲに実際ログインする展開もあった。それくらい何でもありなので自分の知ってる分野にスポットがあたる可能性はいつだって無いとは言いきれないのだ。

 "勇者"になって、めでたしめでたしではない。謎を自力で解けた"甜菜"の気持ち良さはまだ実感を得ていない。「あんたがた」はまた開催され、人々がまた集う時はきっと来るだろう。

次のヒーローになる『誰か』は、自分自身かもしれない。

そんな可能性を信じて、この記事を見て初めて知った人もそうでない人も、よければ次回の「あんたがた」で一緒に悩んだり喜んだりできれば幸いである。

 

 

 

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\おたからっ!/