手の平の中に、世界はあった。

ガラケーって言葉も無かった頃の携帯電話ゲームとか昔のゲームとか、他なんやかんやを書き残しておきたい、そんなブログです

「ポストアポカリプスベーカリー」―終末世界に幸せを

 「Time Machine」から始まった、合同会社ズィーマの社長であり開発者である「じぃーま」氏(@somebow_ippan)製作のスマホゲーム、その一旦の集大成と言えるのが本作「ポストアポカリプスベーカリー」である。

タイトルにある通りじぃーま氏お馴染みの終末世界、ポストアポカリプスの世界観で今回表現されたのは、地球最後のパン屋という舞台を通してのいつにも増して優しく暖かい1本の連作ストーリーだ。

今回も本作の要素を色々取り上げつつその良さに迫っていこう。

 

 

 

操作システムはとても簡単ッスよ、テンチョー!

 

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https://play.google.com/store/apps/details?id=com.zxima.PostApocalypseBakery

 

 「ポストアポカリプスベーカリー」、長いので以降「ポカベリ」と略させていただこう。「ポカベリ」はゲームジャンルとしては単純操作でストーリーを読んで楽しむアドベンチャーである。

もうそろそろ滅びます、なギリギリの世界でそれでも逞しく生きる人々に『空気中に漂うダークマターを変換してつくった美味しい食パン』を提供するという今作もイイ感じにロックでファンキーな設定をひっさげてやってきたわけだが、店長となったプレイヤーがやる事は「スワイプ操作でお客さんにパンを提供する」、これひとつでほぼほぼ全部である。

あとはお客さんのお話を聞き、時に「今以上に美味しかったり柔らかかったりするパンだともっと良いんだけど……」という『ごようぼう』と名のついたクエストをこなすためパンの売り上げを使ってパンのアップグレードをするくらいのものだ。

 

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スワイプでパンをカウンターの上に置こう

 

「Time Machine」の頃に回帰したと言ってもいいくらいシンプルさには、「My Love.」の歯ごたえに面食らったプレイヤーも安心したのではないだろうか?

本作が見せたいのは心温まるディストピア(公式キャッチフレーズ)である。物語を邪魔しないようゲーム面は軽いウェイトで、ということであればそのさじ加減はまったく良い塩梅と言えるだろう。

 

今日もお店は大繁盛で嬉しいッス、テンチョー!

 従来のじぃーま氏のゲームはプレイヤーとゲーム内のキャラクターとで1:1のコミュニケーションをとるのがテンプレートとなっていた。

今作はパン屋という店舗経営をする立場ということもあって店の頼れる接客従業員であるホームベーカリー型ロボ・ホームくんが相棒を務めてくれる。あとパンの作成は無口な仕事人・パンデミックと名のついたロボが毎回せっせと作ってくれている、縁の下の力持ちだ。

そしてお店であるからして、パンを求めてやってくるお客さんとの触れ合いも存在する。

「ポカベリ」はじぃーま氏製作のゲームで現状最も賑やかで大ボリュームの作品であるのが最大の特徴だ。章立てのストーリーのクライマックスにはすっかり常連さんになったお客さんの皆さまが一堂に会してお店の中がぎゅうぎゅうになるのがクスッと笑えてきつつ感動できるし、『ごようぼう』に応えていくうちにお客さんに訪れる変化を見守るだとか、お客さん同士の交流で生まれる問題や色々な垣根を越えた絆の繋がりなどといった人間模様(非人間もいっぱいいるんだけども)の観察をいつものじぃーま節テキストで読み進めていくのは本当に楽しい。複数キャラによる掛け合い・広がりによってほのぼのコント的な面白さの引き出しが出て来たのは喜ばしい事だろう。

 

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もうこの絵面見るだけでも面白そうでしょ?

 

 何より上の画像でお分かりいただけるかと思うが、世界が滅びてミュータントがのさばるような環境なので、現代日本が舞台の作品に比べるとキャラクターを多彩な方向性で出せるという世界観が生む強みを遺憾なく発揮しているのはピックアップしておきたい面白ポイントだろう。

普通の外見の人間ももちろんいるがゲームで最初に訪れるお客さんはサイボーグだし、ストーリーを進めていくとCGやホログラムがそのまま動いているようなサイバーなお客さんまでパンを買いにくるわ、過酷な環境に適応した結果進化したヒトのようでヒトじゃない種族がやってくるわと視覚的にも飽きない。そしてこれだけ個性を山盛りにしておきながら、やっぱりじぃーま氏が書きあげる物語は暖かくて、優しい。

……まあ今作に限ってはいい話ばかりではないのだが。1対1から複数人の人の思惑が交錯するようになった結果、誰かの抱えた想いが必ずしも報われ、満たされるものではないという展開も今作はちょっとだけある。それでも他のポストアポカリプス作品のような痛ましく辛く、絶望が胸を刺すような展開ではない事は保証する。心温まるディストピア(公式キャッチフレーズ)の名は伊達ではないのだ。

 

たゆまぬ企業努力が良いお店を作るッス!そうッスよね?テンチョー!

 「ポカベリ」はじぃーま氏のツイッターや開発の様子を書き留めたブログでその製作過程の段階から様子を見て楽しみにしていたタイトルだったのだが、じぃーま氏は今作を作るにあたって内容の追加拡張を前提にした造りを意識し、実際に「ポカベリ」はリリース後にいくつかの新しいストーリー・キャラクターを後から追加してインストールしたユーザーを楽しませてくれた。現在のストーリーシリーズは9、バージョンは2.2.1にまで至る。

この点は本当にいちファンとして「ありがとう。じぃーまさんのそういう所、好きです」と言いたい。

 というのも、個人製作のゲームはリリースしたら致命的なバグの対処はさすがにするけど出したらおしまい、というパターンも決して珍しくは無い。また、個人・メーカーに関わらずアップデートや追加要素を入れ込む造りを考えてないかのようにナンバリングを増やして別アプリ・新作アプリですよーという顔をされる、という事案もまれに見受けられる。開発側を責めるつもりは無いが、この方式だと慣れ親しんだ古巣を放棄して移らなくてはいけない、という一抹の悲しさがどうしても心に曇りを作るようで好きではない、というユーザーの気持ちもわかっていただきたいものだ。

拡張性のあるゲーム、アップデートをしてくれるゲームというのはすなわち開発者がそれだけそのゲームを丁寧に面倒見てくれるつもりがある、という事だ。そしてそれだけ丁寧に肉付けされたゲームであれば、ユーザーはゲームに対して気持ちよくお金を払いやすい、という事でもある。

 「Time Machine」の時にも触れたがじぃーま氏のゲームのマネタイズはきちんと製作者が考えて、決めて、ユーザーが満足するかを意識しているなと感じ取れる良いものとなっている。「ポカベリ」でじぃーま氏が試みたのは『アップデートにより1タイトルで長くお金を集められるゲーム』である。このあたりの話は氏のブログでもしっかり意図などを説明されている。

 

blog.zxm.jp

 

当然ながらお金をたくさん集められるゲームにするには魅力的な良いゲームにしなければ難しい。

では魅力的なゲームとは何か?幾度もプレイしたくなるようなゲーム、というのは答えのひとつであるだろう。

何度も遊びたくなるゲームってなんだろう?アップデートのあるゲームである。魅力的な変化や追加があればユーザーは飽きにくかったり飽きても戻ってくる可能性が出て来たりして結果、そのゲームの寿命は延びていく。

理屈としては単純明快だがこの理屈を実践するのは本当に容易ではない。

キャラクターのグラフィックを作り、テキストを作り、プログラムを動かし……裏では沢山の時間と手間がかかっている。

その時間と手間を惜しまず費やし、自分のゲームに対して我が子のように情熱を注ぐ。

じぃーま氏のゲームの魅力はその様をツイッターブログで小まめに経過を見せてくれることでより可視化されているのではないか、というように感じた。

いわばちょっとした工場見学のようであり、作り手の丁寧な仕事ぶりが伺える「ポカベリ」をリリース当初に各所がこぞって取り上げたのは自然の流れと言えるだろう。

 

で、今作の課金要素はどんな風になってるッスか?テンチョー!

 今まではマルチエンディングだったためエンディングのヒントや周回を楽にする機能だったりが目立っていたし、「ポカベリ」もパンを作ってお店を開店させるためのエネルギーが1時間に1回・3回までストックとなっているのでそこの短縮も課金でできるが、今作は言うなればデコレーションによるカスタマイズで自分だけのパン屋を作る。そういう傾向の課金コンテンツが多く揃っている。

ホームくんのカラーリングを変えたり、パンデミックを飾りつけたり、はたまたパンそのものをイジったり……店の仲間達に対して色々できる。

そして今作にはちょっぴりガチャ要素があり、お店に飾るポスター全90種類がクジ引きにより取得できる。このクジをいっぺんにすぐ引ける課金も人によっては嬉しいところだろう。

自分としては今作のオススメとして【フィギュア飾り台】をチョイスしたい。ストーリーを進めてお客さんの『ごようぼう』をこなし切ると様々なフィギュアを獲得できる。それを2体お店のカウンターに並べることができ、ポスターとはまた違った店の彩りになる。

 

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実際に飾ってみるとこんな感じ

 

ホームくんの見た目変更はちょっと値段が上がるが後発アップデートで盛り込まれたお店の飾りは110円とお安い。プレイ自体はいつも通り完全無料で全て楽しめるが今から1から始めると無料なのが申し訳なくなるほどにボリューミーだしやっていくうちに誰かしら好きになるキャラが出る可能性は高い。そいつを推してフィギュアを飾るためにも、飾り台、実にオススメです。

 

世界をパンで満たすため!今日も頑張るッスよ!テンチョー!

 次にリリース予定の「ザ・ファイナルタクシー」の予習、あるいは前哨戦として今からのプレイ・久しぶりの復帰プレイでお手にとっていただく、というのも良いのではないかと思う。世界に愛と平和とパンを振りまくハートフル終末ストーリーを、是非よろしくお願いします。

合言葉はそう、"世の中の大抵の問題は……"

 

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でも今作もカレーが無いのでナマステではない

 

実際本当にこの理屈で大体の話が進むの、本当にじぃーま氏の剛腕が為せる技だなと思いました。