手の平の中に、世界はあった。

ガラケーって言葉も無かった頃の携帯電話ゲームとか昔のゲームとか、他なんやかんやを書き残しておきたい、そんなブログです

ノンフィールド+パズルRPG「Magicus(マジカス)」はお値段以上の面白さなので買って損なし

 

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(公式ページ)

 

 ノンフィールドRPG、というジャンルがある。

例えば「ドラゴンクエスト」は『お城の中』という1つの画面……マップから物語が始まり、マップの中でキャラクターを動かし、城の外へと出ていけばまた別のマップへと画面が遷移していく。

ノンフィールドRPGはそのようなマップを用意せず、城なら城の1枚絵をぽんと出して施設への移動をボタンひとつで済ませ、ダンジョン探索も「進む・戻る」のワンアクションで行えるようにし、情景や状況説明はモノローグテキストでまかなう動きの少ないタイプのゲームである。PCのフリーゲーム界隈では時折名作・良作が生まれ話題になる、そんなジャンルだ。古くは「雪道」、「ダリヤ ~ Lasciatemi morire ~」、10年以内の最近では「ロードライト・フェイス」、「人類滅亡後のPinocchia」、「Helldiver」などが挙げられる。

ノンフィールドRPGは良く言えば『硬派な・シンプルなデザインやシステム』であり、悪く言えば『淡泊で無味乾燥なデザイン』、そして『戦闘が大味』あるいは『戦闘が難しい』という評価がつきがちなジャンルである。原因としては多くの場合プレイヤー側は1人きりで戦闘を展開していくという点と、先人に倣って厳しめのバランスで戦闘システムを組むという風潮、全体的なデータのシンプルさが生むカーブではなく段々で上がっていく難易度バランスあたりだろうか。

このためどうにも地味であり、不親切で、快適さに欠けるタイプのゲームではあるのだが……静かに数字をやり取りし、試行錯誤を重ねて望み、制限のある中で道を切り拓くゲームプレイにたまらない楽しみを見出すゲーマーがずるんずるん沼の底へと沈むようにしてハマりこむのもまた、ノンフィールドRPGというジャンルなのだ。

本作、「Magicus」(以降「マジカス」と表記する)はこの好きな人は好き、という尖ったジャンルであるノンフィールドRPGを『戦闘パートをパズルゲームにする』事で尖りと淡泊さへの対処を行い、様々な要素で肉付けし旨味を付与する事で楽しめるユーザーの間口を広げたピカイチに面白いゲームである。

買い切り型というだけでスマホゲーム界で埋もれがちになってしまうが、埋もれさせるのは勿体ないなと思いこうして今回執筆に踏み切った次第だ。500円でお釣りがくる安さで20時間は余裕で溶かせる良ゲー、その魅力を微に入り細に入り語っていくとしよう。

 

戦闘パートに豊かな選択肢を与える魔法システム

 冒頭でも述べたように、「マジカス」は魔物と遭遇するとパズルで戦うことになる。

 

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タップで1個消すと1手進む方式。タテかヨコで3個以上同色が揃うと消える

 

魔物の横にある数字が0になると敵のターンとなり攻撃が飛んでくる。そういつも都合良く1個消したら3つ揃うな、という盤面になるとは限らず時には何手も使ってちみちみ消すしかない地味な状況にもなり得る。ちょっとわびしい。

そんなわびしい事にならないよう、そして戦闘を有利に運び状況を能動的に動かせるようにするために魔法があるのだ。上のスクリーンショットの下部に並ぶ5つのアイコンがその魔法である。

5つセットできる枠が存在するので使いたいものを選んで入れたら出来上がり。……ではない。魔法を使うにはパズルで魔法に対応するカラーピースを消して「詠唱」を貯め、アイコンのすぐ上にある「魔素」のゲージを必要量貯めることではじめて行使できる。

1番左にセットした魔法は「魔素」がカラでも最初から使え、右に行くにつれ貯めるべき「魔素」量は多くなる。その代わり右にいくほど魔法の効果は強くなる。

これにより同じ魔法でも軽い普段使いにする人と最大威力のとっておきにする人でプレイスタイルが細かく分かれるようになる効果が出ている。回復魔法ひとつとっても、左~真ん中に配置して気軽にいつでも出せるようにするか右方に置いてキツくなるステージ後半に一気に立て直せるような運用にしていくか、などといった選択が生まれる。

魔法自体のバリエーションも豊富だ。魔物への直接ダメージや回復はもちろん、毒・麻痺・眠りの3種の状態異常を積む魔法やパズルステージへ干渉ができる魔法、ちょっとトリッキーなものとしては特定カラーの魔法の「詠唱」値を貯めるものなんていうのもあったりする。

従来のノンフィールドRPGでは単調に殴りつけるだけに終始しがちなところを完全に解決し、また、難易度の面においてもステージの魔物に効果的な魔法編成を見出すことができれば多少の無理をきかせて踏破を為し得る余地が生まれている、という点は非常にデカい。このジャンルにおいて常に懸念すべきは「同じ事の繰り返しによるダレ・飽き」であり、挑みたいステージが難しいのでレベル上げを強いられる、という展開はなるべく無い造りにしておくのが望ましいからだ。

楽しい、かつ常に頭を使う必要は必ずしも無い。状況によっては魔法で一掃し1戦くらいはサクっと片づけられる、そういう支度した上での楽ができるような快適なプレイングを実現した「マジカス」の制作者・KEIZO(@_KElZO)氏の発想とバランス感覚により仕上がった遊び心地は本当に『時間が溶ける』と形容するにふさわしい出来だ。

 

スキルとボードのシステムもただただ嬉しい

 ゲームを進めていくと冒険を便利に・有利にするようなスキルを秘めたピースの要素が解放され、ボードにはめ込んで装備することで効果の恩恵を受けられるようになる。

 

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丸と四角、2種類のパーツスロットがある

 

ピースの内容も多岐に渡る。ステータスの底上げ、各種リソースの消費軽減、お金などの取得量アップなどの様々なパッシブ効果をボードの空きと相談して組み合わせていくわけだ。

実際に遊び進めていくと、このピースとボードは段々豪勢にじゃらじゃらセットしていけるつくりになっている。これは地味だが非常にプレイを楽しくさせるのに効いているのだ。良いボードが手に入っていくと単純にボード1つにつき付けられるピースの数が増えたり、スキルピースにはランクの概念があるのだが上位のボードはランクを上げる補助ピースが無くてもスロットにぽんと嵌めれば一発で高ランクの効果でピースを使えるようになっていたりする。

装備できるボードの枚数そのものを増やせるアイテムもあるので最終的に使えるピース数は10を超えてくる。これだけ枠があれば大体の有用なピースは取捨選択せずに使っていけるのでストレスが少ない。システム面でもピースの強さ、ランクはボードとランクを+する補助ピースに任せることで+値の違う下位から上位スキルピースへの乗り換えで古い弱いピースが溜まってごちゃつく、という事態を上手く避けている。

前項の魔法も、5枠というのはこの手のゲームにしては多めで攻撃・回復・補助と一通り携えて冒険できるようになっている。構成要素が多いならそれを組み込む受け皿も相応に多くなくては面白さは片手落ちになってしまう、という事だ。新しいピースが増えても「いや、カラのスロット無いし…入れ替え面倒だな…」ではなく「おっ、今は嵌めるとこないけどあのボードを良いものに取り換えられたら入れようかな」という考え方ができるため、モチベーションの維持、小目標の目安としてかなりいい働きをしているように感じられた。

 

ハウジング要素があるゲームは良いゲーム(自論)

 このゲームで記事を書こうと思い立った理由のひとつが【ゲーム中で自宅を持てる】という点である。「どうぶつの森」シリーズのような自由自在の家具配置とはさすがにいかないが、これが中々どうして悪くない。買い集めていく家具ひとつひとつに実利的な効果をつけつつ、家の中に実際購入した家具の存在がフィードバックされていくことによりちょっとずつ愛着が湧いてくる感覚が気持ちいいのだ。

 

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殺風景な家もゲームを進めていくとここまで豪華になっていく

 

特に最初は寝るところすら無いので、ベッドを買うのがひとつの区切りという感じになるだろう。仮の住処の宿屋からおさらばする瞬間の感慨深さはぜひ実プレイで味わっていただきたい。

ふかふかのベッドで寝起きし、キッチンで腹ごしらえをしてから冒険へ繰り出す。この【キャラがゲームで何気なく日々を生きる感じ】は強くゲームへ親しみと好意を抱く契機になる。ジャンル上無機質な味わいになりがちなノンフィールドRPGに暖かみを与えている、やっぱりハウジング要素は素晴らしいエッセンスなのだ。

 

総じてデータの盛り込み・作り込みが◎、ただし惜しい点もアリ

 数百円というお買い得でいいのかと思っちゃうほど、有料買い切り型スマホゲームとして損はさせません!とばかりのボリューミーな出来にとにかく感心させられるのが「マジカス」の良い所だ。

装備品ひとつとってもプレイスタイルによってより良い装備のチョイスは微妙に変わる、そんな選択の余地が生まれる程度には種類がある上に新しい装備に取り代えても装備からスキルピースを抽出する、という利用価値が残されている場合もある。事と次第によってはピース目当てで装備品を作ることもあるだろう。

ダンジョンステージも多い上に、道中のイベントもお助けキャラに遭遇・罠色々・宝箱・植物採取などなどと豊富であり、これらのイベントが失敗するかどうかは各種冒険技能の数値の高さにかかっている。この数値はレベルアップ時に振り分けることが可能だ。

全てのステージには初回踏破報酬が用意されており最初の1周に対して「よしやるか!」と言えるような希望を持たせている。この踏破報酬のみならず、「マジカス」は動きの少ないゲーム性に飽きさせないようにとにかく小まめに・複数の方法でプレイヤーに報酬をくれるのだ。ステージ中のイベントで各種くじ引き券を握らせ「くじ引き屋」で引かせたり、魚釣りをさせて釣れた魚に応じたポイントを獲得して貯め景品と交換できる「魚屋」を置き、今までのステージ内で進んだ総歩数に応じてご褒美をくれる「歩数屋」の存在により黙々とステージを歩く作業にも見返りを与えている。

ここまでやってくれればもはや戦闘がパズルであるという点を抜きにしても、ノンフィールドRPGとしてのみ見てもお金を払って遊ぶ価値は充分にあると言っていいだろう。

 ただ非の打ちどころがない完璧なゲームだ!とは言いきれないのも事実なので気になった点も少し書いておこうと思う。

・段々釣りが面倒になる

上手い事タップ連打したりしなかったりして釣りゲージを左端に持っていくことでやっと釣り成功となる。最初のうちは面白かったが終始ずっとこれに付き合わされるとなるとやはりここが「楽できないかな…」という気分になった。寝転がって楽にプレイできるジャンルにありながらこの釣り要素が楽さを邪魔する点だけかみ合わせが良くなく、非常に惜しい。釣果アップよりも早いうちに釣りゲージに対して有利になるピースがあると良かったかもしれない。

・ストーリー面が若干残念

話に『一区切り』つくまではダンジョンステージ内で、物語中で仲間になるガリベ君とモナちゃんという2人との会話で賑やかな道中を楽しめていたが、『一区切り』後に次の大目標に至るまでの過程ステージにもてっきりあると思っていた会話がぱたっと無くなってしまったのにはなんだか尻すぼみだなぁと思わされた。

このジャンルから生まれる良作・名作はそのストーリー・表現が図抜けているから評価されている節が大いにある。展開上難しかったのかもしれないが、ここが手間をかけてきちんと肉付けしきれていたらもっと評価が良くなったのではないだろうか。

・慣れてくると「魔素」余りを起こす

敵の攻撃やステージ内ランダムイベントの罠で「魔素」が減るほか、宝箱の開封には少々の「魔素」を消費する必要があり、また初期から持っているHP回復アイテム(使っても無くならない)は大量の「魔素」を消費して発動させるものである。

……逆に言うと、ゲーム中で「魔素」が減る要素はこれらだけ、である。敵に攻撃される機会を減らせるよう首尾よくことを運び、普通の回復薬を用意して魔法をいつでも全種撃てるように……と周到なプレイングをしていくと「魔素」は大体常にゲージ満タンになって安定してしまう。この点はちょっぴり勿体ないかなと思った。もう少し「魔素」を支払わされるイベントがあれば「魔素」を補給できるアイテムの生きる機会も増えたのでは。

 

古参ゲーマーは即買いでもいいくらいかも

 ゲームの話題を取り扱う超有名どころ・ゲームキャスト(@gamecast_blog)様の紹介ツイートで存在を知ったこの「マジカス」、色々語ったが総評して【買い】である。

何もかもがまだ無い状態の最序盤が難しいという声も上がっているが、話題になった今は序盤の攻略アドバイスを載せた記事も探せばあるのでちょっとの苦労はあるがそこを乗り越えてぜひ遊んでみて欲しい。

特に、この画像を見てピンときた人にとってはオススメだ。

 

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これだけでわかる人にはわかるやつ

 

ちなみに「マジカス」、魔物を倒して得た経験値が反映されるタイミングは『宿・自宅で寝た時』である。寝る前にステージのどこかしらで倒れると難易度によってそれまで得た経験値が減ったり全部無くなったりする。

馬小屋……無料……レベルアップのタイミングは寝た時……なんなんだこの既視感は……!?

―――つまりは、そういう事である。この理解できるまでのとっつきにくさ、歯ごたえのある難易度、豊かな各種データ。

古き良きファミリーコンピュータ時代から今に至るまでゲームに触れてきた古強者たちであれば、むしろこのゲームはなんだか手に馴染むくらいだろう。

覚えある者は今すぐストアページへ走った方が良い。楽しい数十時間がその先に約束されていることだろう。健闘を祈る。